アーユルヴェーダとは?

アーユルヴェーダ(आयुर्वेद aayurveda)はインドの伝統的な学問で、その名はサンスクリット語の「アーユス(आयुस् aayus 生気、生命)」と「ヴェーダ(वेद veda 知識)」の複合語である。現代でいう医学のみならず、生活の知恵、生命科学、哲学の概念も含んでいる。約五千年の歴史があり、チベット医学や古代ギリシア、ペルシアの医学等にも影響を与えたといわれており、インド占星術とアーユルヴェーダも深い関わりがあるとされている。「ヴァイシェーシカ」や「サーンキャ」を基礎においている。

 

・健康の基本的な考え方

心、体、行動や環境(西洋医学の父といわれるヒポクラテスも重視した)も含めた全体としての調和が健康にとって重要とみる。アーユルヴェーダでは病気になってしまってからそれを治すことより、病気になりにくい心身を作ること、病気を予防し、健康を維持するという「予防医学」の考え方に立っている。より具体的には、ドーシャ(元素)のバランスが取れていること、各ダートゥ(肉体の「構成要素」の意)がきちんと消化されていること、不快な状態がないことなどが健康の条件となる。

 

・トリ・ドーシャ(3つの元素)

トリドーシャ त्रिदोष(3つのドーシャ दोष)説は、鉱物、植物、動物、人間および環境世界はヴァータ वात ・ピッタ पित्त ・カパ(カファ)कफ という3要素を持っているとする説。人間は個人により3要素の強さの違いがあり、性格や体質の違いとして現れるという。また、それに合わせた食生活、病気の治療法があるという。各ドーシャにおいて、ヴァータは「空・風」、ピッタは「火」、カパ(カファ)は「水・地」、を表している。ドーシャは1日のなかでカパ、ピッタ、ヴァータの順で変化のサイクルがあり、1年のなかでもサイクルがあり、人の一生の中でも変化する。また、食べ物や行動などでも変化する。


・サプタ・ダートゥ(7つの構成要素)


1.ラサ(血漿)
2.ラクタ(乳糜、にゅうび)
3.マーンサ(筋肉)
4.メーダ(脂肪)
5.アスティ(骨)
6.マッジャー(骨髄)
7.シュックラ(生殖組織)


食べ物は以上の順で代謝されていくという。そして最終的に、オージャス(活気)となり、生き生きとした健康な状況を生み出すとする。

これらのダートゥを変換するためにはアグニ(消化の火)が働く。アグニが正常に働かないとアーマ(未消化物)が生成され、またマラ(老廃物)の生成と排泄に異変が起きる。


・日本での現状

アーユルヴェーダの本場インド(特に南インド・ケララ州が盛ん)では、患者の症状に合せて生薬で作られたオイルやGhrita(生薬の成分が含まれたギー)Kwatha(煎じ薬)Choorna(生薬の粉末)などを選択し治療のプログラムが決められる。

上記したようにアーユルヴェーダでは生薬を含んだオイル(100種類以上・生薬1:オイル4:水16の割合で作られる)が使用されるが、日本のサロンのほとんどではシローダラー(額のチャクラに垂らす)を胡麻油やアロマオイルで行っている。また最近では業者のアドバイスからアーユルヴェーダのマッサージオイルを希釈して使用しているサロンもある。

アーユルヴェーダは症状別にエラキリ、ナヴァラキリ、ピリチル、ウドゥワルタナ、パンチャカルマなど40種類以上の治療法があるが、浣腸法などのパンチャカルマは日本では医師しか施すことができない。また最近、ネトラタルパナ(ギーを眼球に浸す)で眼病を引き起こしたり、カーナプラーナ(点耳)で難聴を引き起こす可能性があるため、これらの施術を行っているサロンは医師法に抵触する怖れがある。

近年は、ヨーガと並んでインド式美容、インド式セラピーの方法論として女性向けの雑誌・エステなどで取り上げられることが多く、人気のセラピーになっている。

(c)予防医学とアーユルヴェーダ